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京都国立博物館特別展「京(みやこ)のかたな 匠のわざと雅のこころ」に行ってきました

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 京都国立博物館で2018(平成30)年9月29日(土)から 11月25日(日)まで開催されている特別展「京(みやこ)のかたな 匠のわざと雅のこころ」に行ってきました。

 連日大賑わいらしいですが、行った時間の関係か行列もなく、すぐに入場券を買うことが出来、中の方も混んでいる様子はないので、先に食事をしておこうと入場券売り場の裏にある南門併設のカフェ「前田珈琲 京博店」へ。ここでは待つこと2、3組。

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 京のかたな展限定メニューもありますが、昼食にパフェというわけにもいかないので、「京の赤味噌ハヤシライス」に。ドリンク付きでなかなかのボリューム。それほど味噌っぽい味ではなく、赤色がかった具だくさんのハヤシライスといった感じでした。食事を終え、並ぶことなく入場。

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  展示会場は新しい方の平成知新館ですが、旧館でも何かやっている様子。会場前にある大看板の裏に回って納得。今回の特別展は、ゲームの「刀剣乱舞」とコラボしている企画ということもあり、そっちの展示を明治古都館でやっているということなので、後でそちらも行ってみようと思いながら新館へ。

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 入館すると、まず3階に行くよう案内され、エレベーターで3階へ。順路は上の階から下の階へ。 

 展示されている刀については、京都国立博物館のサイト内の「京のかたな」案内ページにPDFの出品一覧表があります。

https://www.kyohaku.go.jp/jp/special/tenrankai/katana_2018.html

 「第1章 京のかたなの誕生」の展示室入り口を入ってすぐに決めなければいけないのが、「三日月宗近」を最前列で見るための行列に並ぶかどうか。ここから何分という表示がいくつかありましたが、そんなに人がいなかったので並ぶことに。列は流れているので、10分かかったかどうか位の時間で展示ケースの前へ。全方向から見ることが出来、三日月宗近美しい太刀であることがよく分かる展示になっていました。移動しながら見なければいけないので、じーっと見ることは出来ませんが、名前のもとになった三日月形の打ちのけが、刃文の中にくっきりと見えました。刀の鑑賞では光源との角度とか、LEDにするか電球にするかとか、色々と議論される問題があったりしますが、この展示ではそれぞれの刀が持つ特徴を、とにかくはっきり見せるようにセッティングしてあるのかもしれません。他に石切丸や、鶴丸ではないけれども近年発見されたという国永など、平安時代の太刀を見て次の展示室へ。

 「第2章 後鳥羽天皇御番鍛冶」の展示室には後鳥羽天皇宸翰と菊御作が並んでいます。諸国から月番で刀鍛冶を召して自ら作刀した後鳥羽天皇の、自筆の書状と自作の太刀がおよそ800年後に同じ場所に並んでいるというのは、すごい事なのではないだろうかと思いながら、刀身に刻まれた菊の御紋をなんとか確認することが出来ました。他に、いわゆる菊一文字の太刀、菊紋と一の文字が刻まれているのを実際に見たのは初めて。

 「第3章 粟田口派と吉光」の展示室ですが、国吉作の鳴狐と藤四郎吉光が同じ部屋にあるという他に、名物が多数ある吉光の中でも骨喰藤四郎と鯰尾藤四郎が隣同士で並んでいるところは、ここでしか見ることが出来ない光景かも。吉光作の長いものがほとんど無い中で、銘吉光の小太刀を見ることが出来るいい機会でもあります。

 「第4章 京のかたなの隆盛」では、地方への影響の一つとして肥後同田貫の「刀 銘 九州肥後同田貫上野介」がありましたが、刃文が地味とよく言われる同田貫で更にシンプルな直刃調のもあるんだなあというのがその場での感想。ところがこの刀、帰ってから調べてみると、福岡ソフトバンク ホークス王貞治球団会長が九州国立博物館に寄贈した同田貫正国の刀で、読売ジャイアンツにいた現役時代に天井から吊り下げた紙を日本刀で切る練習で一本足打法を完成させたという、私を含むかどうかはともかくとして古い世代ならよく知っているエピソードに出てくる伝説の刀。王貞治所用の刀なら、昭和の名物と呼んでもよいのではないか、「宗三左文字」みたいに王貞治同田貫と名付けてもいいのではないかというのは大袈裟かもしれませんが、説明プレートにそうと分かりやすいように書いておいてほしかった、もっとよく見ておくべきだったと後悔。山城のものに目を戻すと、来派の作がたくさんある中で興味をひかれたのが、武田信玄佩用の来国長。信玄本人は上洛出来ませんでしたが愛刀が上洛を果たしていました。あと、熱田神宮の次郎太刀の大きさにびっくり。

 「第5章 京のかたなの苦難」の展示室では、まず決めなくてはならないのが圧(へし)切長谷部の行列に並ぶかどうか。遠目にも圧切長谷部だとすぐに分かりますが、列が短かったので並んで全方向から見ることが出来ました。ここに並んでいる刀の中で、個人的に目を引かれたのが在銘の正宗。正宗には銘のあるものがほとんど無いので、今までに正宗を見たことはありますが、銘を見たのは初めて。あと、村正も見ることが出来るところがお得な企画展ですが、刀のみならず、足軽の説明の時によく出てくる「真如堂縁起」、髭のおじさんが大きな刀を担いでいる「騎馬武者像」など、歴史の教科書に出てくる絵を近くで見ることが出来るのもお得。それにしてもあの肖像画、新説だか何だか知りませんが、「騎馬武者像」なんて言わないで「足利尊氏像」でいいと思うんだけどなあ。

 1階に降りると、降りた階段の位置の関係か、仏像や寺社に奉納された刀剣が展示されている場所へ。「膝丸・薄緑」の太刀が展示されていましたが、後で調べてみると第8章の展示だったようです。奥へ行って「第6章 京のかたなの復興」の展示室へ。堀川国広が銘を打って写しを作った長義の刀が目につきましたが、これはつまり山姥切国広の本歌である長義の山姥切。写しの山姥切国広も並べて見てみたいと思うのは贅沢過ぎるでしょうか。それでも山伏国広が並んでいますので、この並びは見応えあり。写しといえば、越前康継による骨喰藤四郎の写しがあり、展示室は別でも本歌と写しの両方が展示されているという贅沢感があります。贅沢といえば、郷義弘が展示されていますが、ここでは相州正宗と郷義弘粟田口吉光を同日に見ることが出来るという贅沢を味わえます。埋忠明寿の重要な刀が幾つも展示されていますが、その手前の区画に歌仙兼定があったりして、気を抜いてはいけない並びになっています。

 「第7章 京のかたなの展開」では、江戸期の大坂新刀への展開を見ることが出来ますが、そぼろ助廣、津田助廣、井上真改、一竿子忠綱といった、新刀期の刀を知る者にとってはたまらない刀が並んでいます。

 「第8章 京のかたなと人びと」を見る頃にはだいぶ疲れて、部屋の真ん中に牛若丸の人形があるなあ、この辺は絵が置いてあるなあ、などとぼーっと考えて油断していました。帰りの電車の中で目録を見て気付きましたが、あの絵、伊藤若冲だったのか。祇園祭長刀鉾に付いてるやつでかいなあとか思っているうちに、人間国宝隅谷正峯の作など現代刀の展示で、今回の特別展の締め括りとなります。

 ここに書いたのは一部のものにすぎず、すごい数の刀を他にも見て疲れていましたが、グッズ売り場へ。とりあえず、重くてもいいから図録を買わないと、見たのがどんなものだったか分からなくなりそうなので図録を購入。他にも色々と買い込んで荷物が重くなりました。外へ出ると辺りはすっかり暗くなって、京都タワーが点灯していました。

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 明治古都館に宮入法廣刀匠作の骨喰藤四郎写が展示されていて撮影自由とのことなので行ってみることに。ケースのガラス越しに刀の撮影をするのは何度かやったことがありますが、なかなか難しい。

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 奥の部屋は、刀剣乱舞のキャラクターと一緒に記念撮影ができるようになっています。三日月宗近と記念撮影して奥へ行くと、ここでも骨喰藤四郎と鯰尾藤四郎が隣同士で並んでいました。この特別展、骨喰藤四郎によく会います。限定グッズ売り場には、なかなかいいものがありました。

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 最近まで、刀剣関連のグッズといえば観光地の木刀とか、刀の形をした置物ぐらいしかなかったのが、三日月宗近など個別の刀剣がグッズになることが多くなったのは、うれしいことです。

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 この特別展は京都の刀のみならず大和、山城、備前、相模、美濃の五大生産地いわゆる五箇伝が大体含まれていたり、日本刀の形が成立して以降現代まで全ての期間を扱っているので、入門者にとっては全体を一通り見るいい機会であり、刀剣に詳しい人にとっても見応え十分だと思いました。開催期間はもうほとんど残っていませんが、都合がつけば是非見に行くことをおすすめしたい企画でした。